行政書士には営業力が求められる、と聞くと驚かれる方も多いかもしれません。法律のプロ、それも書類作成をメインに行っている職業ですから、日ごろの勤務はもっぱらデスクワーク、営業職のように連日お得意様をまわって仕事をとってくる、といったイメージはなかなか浮かばないものです。
ただ冷静に考えてみると行政書士の仕事は「新規顧客をどれだけ獲得できるか」がとても大事だということがわかります。たとえば税理士や弁護士は固定客がつきやすい面があります。納税は毎年必ず行うわけですから基本的には同じ税理士に依頼するものですし、さまざまな契約上の面倒や問題を抱えたりしないためにも継続的に同じ弁護士に依頼しているケースも少なくありません。
それに対して行政書士の仕事は会社の設立や相続問題など定期的には行われない、もっと言ってしまえば滅多に起こらないような仕事が多いのです。そのためリピーターや固定客を獲得するのが難しい分、営業でつねに新しい顧客を獲得していかなければなりません。
この点は独立開業して事務所を構える際にとても大事になってきます。一般企業の総務や税務では与えられた仕事をこなしていれば大丈夫な面もありますが、独立して経営していくとなると、途絶えることなく安定して仕事を確保し続ける手腕が求められます。
実務能力には非常に優れて豊かなキャリアを重ねてきた人が、独立開業すると営業力の不足で失敗してしまうというパターンも多いのです。この辺りもこの仕事の難しいところでしょうか。